研究概要 |
1.新規アンチザイムのクローニングと発現解析(1)ゼブラフィッシュの胚からクローニングした2種のアンチザイムAZ-SとAZ-Lの発現解析を行った。ノザンブロット解析では、ゼブラフィッシュ成体、胚および培養細胞のいずれにおいても両mRNAが認められたが、AZ-Sの発現は胚から成体になる間に増加する一方、AZ-Lは逆に減少することが判明した。さらにWhole mount in situ hybridizationにより調べたところ、両者とも胚全身に分布するが、特に中枢神経系や眼球に強い発現が見られ、菱脳では発現パターンの差が認められた(慶大・医、岡本仁博士との共同研究)。なお、ゼブラフィッシュにはアンチザイムが少なくともあと1種は存在するデータを得ている。2.新規アンチザイムの機能解析(1)ゼブラフィッシュのAZ-A,AZ-Lはいずれも哺乳動物ODCを阻害したが、比活性はAZ-Sの方がAZ-Lの約20倍であった。いずれの阻害もラットアンチザイムインヒビターで回復した。興味深いことにAZ-Sのみが試験管内で26SプロテアソームによろOCDの分解を促進した。また、アンチザイム自体の代謝安定性が異なる(Lが不安定)ので今後細胞内での動態解析を行う予定である。(2)マウスに見出された第2のアンチザイム(mAZ-2)はAZ-Sと同様に試験管内ではOCD分解を促進しなかった。他方、mAZ-2を培養細胞に強制発現するとODC活性は低下するが、mAZ-2のODCの分解とポリアミン取り込みに対する効果は導入細胞の種類と発現ベクターによって異なることが明かとなった。現在のところ、mAZ-2自体にはODC分解促進とポリアミン取り込み抑制の活性はないが、未知の生体構成成分と結合しているAZ-1(主要なAZ)を放出させることによってODC分解促進とポリアミン取り込み抑制をもたらす可能性を考えている。(3)ユタ大学のAtkins教授との共同研究で分裂酵母にもアンチザイムが存在することを確認した。ODC活性は阻害するが、ODC分解促進とポリアミン取り込み抑制の活性については不明であり、今後検討する。
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