研究概要 |
1.アンチザイム(AZ)1欠損細胞のODC分解にかかわるAZ様蛋白質の同定 AZ1欠損細胞にスペルミジンを投与し約16時間後に調製した細胞抽出液を4M NaCl存在下にゲル濾過クロマトグラフィーで分画した。ODC阻害活性を指標として分離し、特異抗体との反応性を検討した。その結果AZ様蛋白質はAZ2と同定された。 2.AZ1ならびにAZ2の細胞内局在と細胞内代謝 対数増殖期の細胞では、AZ1とAZ2はいずれもオルニチン脱炭酸酵素(ODC)との複合体として細胞質に、遊離の状態で核に存在した。ポリアミンで強く誘導すると遊離のAZ1が細胞質に出現し、ミトコンドリアにも少量出現した。しかし遊離のAZ2は核に限局していた。AZの細胞内半減期はいずれも40-100分と短寿命であった。いずれのAZもプロテアソーム阻害剤MG132で安定化された。また、核のAZ1,AZ2の分解は核外移行阻害剤レプトマイシンBで強く阻害された。従って、両AZはいずれも細胞質のプロテアソームで分解されると推定された。^<35>Sで放射標識・精製したAZ1(開始コドンの異なる長短二種),AZ2のいずれも網状赤血球溶血液中でエネルギー依存的に分解された。分解はプロテアソーム阻害剤やODCで阻害される点でも細胞内分解を反映すると考えられる。さらに、分解と平行してSDS/PAGEで高分子のバンドが検出されることからAZ1,AZ2はユビキチン化されて26Sプロテアソームで分解されると推定された。なお、興味深いことに、AZを捕捉してその機能を阻害するAZインヒビター(ODCより強い親和性でAZに結合する活性を持たないODCファミリー)はAZの分解も高分子バンドの出現も阻害しなかった。今後、AZのユビキチン化に関与するE2,E3の同定とともに、核に局在するAZ1,AZ2の生理的意義(単なる貯蔵型か、あるいは特異的な機能を果たしているのか)を明らかにすることが重要であろう。
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