研究概要 |
酵母Hansenula anomalaのミトコンドリアのシアン耐性呼吸を担うAlternative Oxidaseの核遺伝子は、環境条件の変化に応じて発現が誘導されるが、この過程の詳細なメカニズムは未だ解明されていない。誘導剤としてシトクロムbc_1複合体の阻害剤であるAntimycin A_3、Ascochlorin、SH化合物であるDTTを用いて、Alternative oxidase核遺伝子発現に関して検討した。 亜鉛イオノフォアであるPyrithioneは、SH基を有するためにそれ自身が誘導作用を示す一方で、AA_3による誘導に対して阻害作用を示した。Pyrithioneと同時に金属キレーターであるEDTA又はTPENを加えると、Antimycin A_3によるAltenative oxidaseのmRNAの発現は完全に阻害された。しかし、Zn-EDTAを添加した場合には、阻害は認められなかった。 さらに、EDTAあるいはTPENとPyrithioneで前処理した菌体にZn^<2+>を添加したところ、mRNAの発現はもとのレベルにまで回復した。これらの結果から、Alternative oxidaseの核遺伝子発現の過程にZn^<2+>が必須の因子として関与していることが明らかとなった。セリン/スレオニンキナーゼの特異的阻害剤であるStaurosporine及びセリン/スレオニンホスファターゼ1,2Aの特異的阻害剤であるCantharidinによるAlternative oxidase核遺伝子発現の阻害効果は、細胞外のリン酸濃度が高いほど強くなった。したがって、Alternative oxidaseの核遺伝子発現に関わるリン酸化・脱リン酸化の過程において、リン酸が抑制的に作用することが示唆された。 以上に関して、さらに研究を進めている。
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