研究概要 |
チロシン脱リン酸化酵素CD45によって、B細胞抗原受容体(BCR)シグナルが、如何に制御されるかを調べた。マウスの未熟B細胞株WEHI-231および、成熟B細胞株BAL-17より、それぞれCD45欠失クローンを樹立し、シグナルの違いを親株と比較解析した。 1.種々のsrc-family tyrosune kinase(Lyn,Fyn,Blk,Lck)およびSykのBCR刺激前後のチロシンリン酸化状態、および酵素活性を検討した結果、WEHI-231ではLyn、BAL-17ではFynにCD45欠失に伴う選択的な差異が認められた。 2.WEHI-231由来CD45欠失クローンでは、BCR刺激前からLynの選択的なリン酸化と活性化が観察された。Lyn分子内ではY397とY508のリン酸化が亢進していた。また、親株ではBCR刺激後に、Y397・Y508両者のリン酸化の亢進が認められた。この結果は、未熟B細胞において、CD45はLynのネガティブ制御部位とポジティブ制御部位の両部位を脱リン酸化すること、またネガティブ制御部位のリン酸化が酵素活性の抑制と必ずしも対応しないことを示唆している。 3.一方、BAL-17では、WEHI-231と異なり、Lynのリン酸化と活性に差は認められなかった。しかし、Fynのリン酸化と活性が、CD45失欠クローンで刺激以前から亢進していた。この時も、Fyn分子内のネガティブ・ポジティブ両制御部位のリン酸化が亢進しており、このような亢進は、親株ではBCR刺激時にのみ観察された。以上の結果から、CD45の機能は特定のSrc-family kinaseのネガティブ・ポジティブ両制御部位を脱リン酸化し、酵素活性を抑制すること、またBCR刺激によりその抑制が解除される機構があることが示唆された。
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