可塑性遺伝子産物Arcを介するシグナル伝達を明らかにするために、Arcと相互作用するタンパク質をTwo-hybrid systemにより解析し以下の結果を得た。(1)Arcと相互作用する新しいSH3タンパク質であるSH3P13を見い出した。(2)ArcとSH3P13が相互作用することをArc-GST融合タンパク質を用いが免疫沈降により確認した。(3)ノーザンブロットにより、SH3P13mRNAは精巣、脳、肝臓に存在していた。 また、SH3P13の標的を解析し、その1つとしてDynaminを見い出した。SH3P13とDynaminとの相互作用を調べ、以下の結果を得た。(1)DynaminはGTPase活性をもち受容体のエンドサイトーシスに関与することが知られている。SH3P13のDynamin GTPaseに対する効果を調べたところ、SH3P13の添加によりα-[^<32>P]GTPは脱リン酸化されGDPとなることから、SH3P13がDynaminの機能を調節することが明らかとなった、(2)Dynaminの抗体を用いた免疫沈降を行うと、SH3P13とDynaminが共沈することから、両者が直接結合することが明かとなった、(3)脳における分布を調べたところ、DynaminとSH3P13はいずれも神経細胞に存在し、大脳皮質II-III層およびV層に共存していた、(4)培養細胞に受容体、受容体のリン酸化酵素およびSH3P13のcDNAをCOS-7細胞にトランスフェクションしを発現させ、放射性リガンドを用いて受容体のエンドサイトーシスを調べた結果、SH3P13はドーパミンD2受容体のDynamin依存性エンドサイトーシスを抑制することが明らかとなった、(5)myc抗体でD2受容体を可視化し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した場合も、SH3P13がドーパミンD2受容体のDynamin依存性エンドサイトーシスを抑制することが確認された。
|