平成12年度は、Na^+/H^+交換輸送体(NHE)の構造と機能について大きく分けて3つのプロジェクトを継続して行い、次のような成果を収めた。 1.NHEの構造と機能:特にpHセンサーの構造について。昨年度報告した普遍型アイソフォームNHE1のトポロジー解析に基づいて、膜ドメインの構造と機能をより詳しく解析した。特に、推定上11番目に相当する膜貫通ドメインを網羅する変異を導入すると、そのうち二つの変異体は形質膜に発現しないことを発見した。興味深いことに、一次構造上離れた位置にある部位に第二変異を導入するとタンパク質が形質膜に発現するようになった。この解析から、第一・第二変異の位置が立体的に近いことが推測される(FEBS、2000)。また、11番目の膜貫通ドメインに変異を導入すると、ある変異体では交換活性の細胞内pH依存性が大きくアルカリ側にシフトし、この膜貫通ドメインがpHセンサーの構造の一部であることが示唆された(投稿準備中)。2.NHEによる細胞容積調節機構。昨年度に引き続き、NHEの容積調節を解析した。その結果、NHE2の第一細胞外ループ領域が高浸透圧刺激による活性化を抑制する阻害ドメインとして機能するらしいことが判明した(投稿中)。3.NHEにおけるカルシニューリン類似タンパク質(CHP)の生理的役割。昨年度に引き続きCHPの機能を解析した。その結果、CHPは様々なNHEアイソフォーム(NHE1-5)が交換活性を発揮するのに必須のサプユニットであることが判明した(JBC、2001印刷中)。
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