研究概要 |
本研究の目的は分子間相互作用を高感度に検出する蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy,FCCS)を用い、蛍光標識二重鎖DNA+蛍光標識オリゴDNAを対象にして、三重鎖DNA生成時の分子間相互作用の特徴を明らかにすることである。我々の開発してきたこれまでの蛍光相関分光法(FCS)ではその検出は分子の大きさに依存していたが、FCCSでは、発光波長の異なる2種類の蛍光分子の揺らぎの「同時性」を解析することに基づく分子間の相互作用を直接検出することが可能となる。分子が結合して同時に動くことがあるなら、その揺らぎの中に同時に揺らいでいる信号が見つかるはずである。それを解析する事で分子間の相互作用を解析する方法である。この手法を利用して三重鎖形成解析のための定量的手法を確立し、三重鎖安定化機構を明らかにしようとするものである。 FCCSでは2種類の蛍光色素を用いて、それぞれ別のオリゴDNA鎖に結合させて、その蛍光強度の揺らぎを測定する。このとき、それぞれの蛍光発光を別々の光学フィルターを経由して、明確に分離する必要がある。本年は基礎的なデータを得るために、種々の蛍光色素の組み合わせを考慮し測定をした結果、現在までにRhodamin GreenとCy5の組み合わせが最適であることが分かった。また、相補的な20塩基対、相補的な40塩基対並びに、相補的でない20塩基と40塩基の組み合わせで、それぞれFCCSの測定を行った。その結果、相補的な20塩基並びに40塩基の組み合わせにおいては明確な相互相関の信号が得られ、それぞれ2重鎖の形成率が43%と50%であること、また一方、相補的でない組み合わせでは信号が得られなかった。今後、これらの結果をもとに3重鎖形成の過程をFCCSを用いて測定解析する予定である。
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