研究概要 |
ハロロドプシンは高度好塩菌のもつレチナール膜タンパク質であり,光の吸収によりCl^-を菌体内に輸送する. このハロロドプシンによるイオン輸送機光を解明するために以下の研究を行った. H.salinarum由来のハロロドプシンを含む細胞膜画分をコンデンサーフィルム用薄膜(東レ,ルミラー,0.9μm厚)に吸着させた系を用いCl^-濃度を様々に変えて,発生する光電流の値を測定した.その結果,電流量はCl^-に対してベル型の依存性を示し,マルチイオンチャンネルの透過性から期待されるような形を示すことがわかった.また,レーザーパルスによる光電圧発生の時間分解測定の結果,バクテリオロドプシンが10μsecのオーダーとmsecのオーダーの二種類の電荷移動を示すのに対し,ハロロドプシンではmsecとsub-msecのオーダーでの電荷移動が観察された.この電荷移動は,光反応サイクルとの比較から,N中間体生成と崩壊に対応するものと思われる.更に光電圧発生の時間分解測定を様々なCl^-濃度で行い,時間分解吸収分光測定,時間分解蛍光分光測定の結果との対比を試みた.その結果,Cl^-濃度を上げていくとmsecの時間領域で起こる電荷移動が顕著に遅くなることが観察された.更にその信号強度もCl^-濃度依存性を示し,光電流測定の結果と良い相関が見られた.それに対して,sub-msecの時間領域で起こる電荷移動については,S/N比の問題もあり,Cl^-濃度とのはっきりとした相関は今のところ見いだせていない.この結果は,遅い電荷移動の成分が蛋白内部のCl^-結合部位から吐き出し口にある結合部位へのCl^-の移動に関与していることを示唆する.
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