研究課題/領域番号 |
11680656
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 忠直 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90093187)
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研究分担者 |
山崎 昌一 静岡大学, 理学部, 助教授 (70200665)
大橋 一世 千葉大学, 理学部, 教授 (90114248)
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キーワード | ABP-280 / アクチン / アクチンゲル / アクチンゲル化タンパク質 / 細胞骨格 / 原子間力顕微鏡 / 一分子力学操作 / タンパク質の巻き戻り |
研究概要 |
原子間力顕微鏡(AFM)を使用してABP280一分子の力学的性質を研究した。ABP280は2量体のアクチンゲル化タンパク質で、単量体当たり24個のイミノグロブリン様ドメイン構造(Ig-ドメイン)からなる。金蒸着した雲母表面に吸着させたABP280分子にカンチレバーを近づけて先端に吸着させてから引っ張り、引き伸ばした距離とその時にカンチレバーにかかる力との関係(force-extension curve)を求めた。一周期が30nmの繰り返しパターンが長いもので800nmにわたって観測されるような、特徴的なforce-extension curveが得られた。これはABP280分子のIg-ドメイン構造が、順次ひとつづつ解ける(アンフォールド)することに対応する。このforce-extension curveは、アンフォールドしたドメインがエントロピー弾性を示すと仮定したwarm-like-chainモデルによくフィットする。さらにひとつのドメインをアンフォールドするのに要する力は引き伸ばす速度に依存し、0.6μm/secでは230pN、0.06μm/secでは135pNであった。また、一度引き伸ばした後、緩めて力をかけない状態で数秒間保持してからもう一度引き伸ばすと、最初に観測されたドメイン数の何割かが再びアンフォールドするのが観測された。これは一度アンフォールドしたドメインが弛緩することで、もとのnativeな状態へ巻戻った(リフォールド)したことを示す。さらに我々は、ABP280で架橋されたアクチンネットワークが、小さな変形に対してはゲル、大きな変形に対してはゾルの性質を可逆的に示し、これらの挙動が先に述べたABP280一分子の力学的性質に密接に関係していることを明らかにした。
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