研究課題/領域番号 |
11680660
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
今元 泰 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (80263200)
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研究分担者 |
徳永 史生 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80025452)
片岡 幹雄 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
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キーワード | 蛋白質構造変化 / 光反応サイクル / フーリエ変換赤外分光 / 中間体 / 水和 / アミドバンド / 水溶液 |
研究概要 |
紅色光合成最近Ectothiorhodospira halophilaの光受容蛋白質・Photoactive yellow protein(PYP)は、光を吸収すると光反応サイクルを示す。これまでのわれわれのX線溶液散乱法による解析結果では、水溶液中でPYPがM中間体に変化したときには、慣性半径の増大をもたらすような大きな構造変化が起こることが明らかとなっている。しかし、これまでの赤外分光法の結果では、これに対応するようなアミドバンドの大きな変化は観測されていない。赤外分光法では、水分子の赤外域での吸収が大きいことから、蛋白質の乾燥フィルムを用いた測定を行ってきたが、乾燥フィルム上では蛋白質の自由度が制限されているために、本来の構造変化が抑制されている可能性があると考えられた。そこで本研究では、水溶液中でのPYPの本来の光反応に対して赤外分光法を応用するため、PYPの水溶液試料を用いた測定を試みた。 高濃度の試料を短い光路長で測定するため、試料として30mg/mLのPYP溶液を調製した。また、10μmマイラ膜のスペーサと2枚のフッ化カルシウム板で試料セルを作成した。フーリエ変換赤外分光光度計を用い、PYPとM中間体の差スペクトル測定し、乾燥フィルム中のものと比較したところ、発色団由来のバンドは両者でほぼ同じであったが、アミドバンド領域では、水溶液中のほうがより大きな吸収変化が観測された。これは、水溶液中と乾燥フィルム中のM中間体では、発色団まわりの構造はほぼ同じであるが、蛋白質部分の構造変化は水溶液中の方が大きいことを示唆している。今回の水溶液を用いた測定法では、pHや塩等の緩衝液条件を自由に変えることができるので、次年度ではPYPの水溶液中での本来の構造変化過程をより詳細に明らか解析する予定である。
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