本研究の概要と得られた成果は以下の通りである。 1)マボヤ幼生のcDNAライブラリーからGタンパク質αサブユニットをコードするcDNAを探索し、五種類のクローンを得た。その内の二種(HrGn、HrGXと名付けた)は、これまで見いだされていたGタンパク質のサブクラスに属さず、新規なサブクラスを構成するものと結論された。 2)これら五種のGタンパク質遺伝子のホヤ卵発生に伴う発現様式をWISH(Whole-mount in situ hybridization)によって調べた。これらのGタンパク質遺伝子が各々に特徴的な時空間的に制御された発現様式を示すことを明らかにした。 3)我々の見いだした新規Gタンパク質HrGnの発現制御領域の検討を行った。HrGn遺伝子上流配列をマボヤゲノムライブラリーからPCRで増幅し、6kbpをクローニングし、その配列を明らかにすることが出来た。さらに、上流3.5kbpの配列の下流にGFP遺伝子を融合させたHrGn-3.5-GFPを作製した。マボヤ卵への顕徴注入実験の結果ここにはHrGnの発現様式を再現できる制御配列が含まれていることが明らかになったので、HrGn-3.5-GFPを基に上流配列の長さの異なる種々のクローンを作製し、顕徴注入実験を行った。その結果、HrGnの発現制御には遺伝子上流1400bpから1100bpの間の配列が重要であることを明らかにした。 4)HrGnの発現制御領域が明らかになったので、上流1400bpの下流にHrGn遺伝子-GFP融合タンパク質を発現するベクターを作製した。この顕徴注入実験は現在進行中である。これによって本研究の課題である情報伝達分子の可視化が可能となると期待される。 5)また、我々の見いだしたGタンパク質の生理機能を明らかにするために、各Gタンパク質の合成mRNAの顕微注入実験を現在進行中である。
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