われわれは、異なるタンパク質の立体構造間で共通に見出される局所構造モチーフを検出するため、Delaunay四面体分割を利用する方法を提案した。この方法は、(1)それぞれの局所構造がコード番号で記述されるため、コンピュータで局所構造データを検索したり、統計的処理をするのに都合がよい、(2)局所構造が、Delaunay四面体の辺(空間的に近接する残基間の相互作用を表わすと考えられる)の網の目構造に着目して定義されるため、孤立した二次構造ではなく、その周囲にある(ペプチド鎖に沿っては離れているが、空間的には近接した)アミノ酸残基を含んだ構造要素として検出される、などの特徴をもち、これまで、αヘリックスとβ構造について調べた結果を報告した。 そこで本年度は新たに、4つの頂点がすべて疎水基で占められるようなDelaunay四面体を含む局所構造を、コード番号が付けられた局所構造を収集したデータベースから検索し、モチーフと呼べるような何か特徴的構造が浮かび上がって来るかどうか調べてみた。これは、疎水コアと呼ぶことができるような局所構造モチーフをイメージしたものであったが、はたして、結果は期待どおり、疎水コアを形成する特徴的なパターンがいくつか浮かび上がってきた。出現頻度の多かったものは次の3つの局所構造モチーフであった。 a.αヘリックスの疎水面を形成する残基からなる四面体。 b.α/β型構造をとるβシート上にある残基からなる四面体。 c.2本のαヘリックスの接触面にある残基からなる四面体。 これらの構造について、各部位におけるアミノ酸の出現頻度などを調べ、それぞれのモチーフの特徴を調べた。
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