タンパク質の立体構造をDelaunay四面体で分割、それぞれの四面体に局所構造の特徴を反映したコード(文字列)を付与し、同じコードを付与された四面体を異なるタンパク質から収集することによって、モチーフと呼べるような、頻繁に出現する共通の局所構造を同定・解析することを目的とした研究を引き続き行った。これまでは、異なるタンパク質から四面体を一つずつ取り上げ、その類似関係を調べてきたが、これをさらに発展させ、四面体の集合体を考えた。すなわち、対応する四面体それぞれが同じコードをもつより大きな局所構造モチーフを見出すためのアルゴリズムを新たに考え、解析プログラムの開発を行った。この方法はまた、相同タンパク質間で立体構造の相違が比較的小さい、いわばrigidな局所構造の同定や、共通局所構造領域の構造アラインメントに利用することも可能である。特に後者については、ペプチド鎖に沿った通常のアラインメントとは異なり、四面体の対応関係から直接構造アラインメントができるところに特徴がある。これらの点について、既知のモチーフに適用し、検証を行ったところ、その有用性が確かめられた。 なお、問題点として次のことが浮かびあがってきた。すなわち、立体構造を表現するコードが、構造のわずかな違いに対して敏感に変化する場合もあり、逆に非常に鈍感な場合もある。特に敏感さは、わずかな違いをも区別するという意味ではメリットである一方で、われわれの感覚では似ていると思われるものが異なった構造とされるときには欠点ともなり、その取り扱いが難しい。したがって、コードの類似性と局所構造の類似性について、今後、検討していきたい。
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