研究概要 |
1.Lys681を含むLoop MとTrp 130を含むLoop Nの特異的蛍光標識 非特異的な結合を押さえるためにリン酸アナログであるフッ化ベリリウム(BeFn)を用いて蛍光性Mant-基をもつ光反応性のMant-8-N_3-ADPおよびMant-2-N_3-ADPをミオシンの活性部位にトラップして安定な複合体を形成させた後、紫外線照射を行ない特異的にloop MとNに光化学架橋させた。そして標識されたミオシンのサブフラグメント-1(Mant-S1)のATPase活性の測定およびアクチンとの相互作用を調べた。ループが蛍光で標識されたS-1の生理的性質は保たれていることが確認された。これらのグループが標識されたS-1の蛍光偏光度とアクリルアミドによる蛍光消光度を測定してアクチンの結合に伴うループの構造変化を調べた。その結果、ループMはアクチンの結合により構造変化を起こすが、これに反してループNはATPのアデニン環結合部位に関与しているにもかかわらずアクチンの結合に伴いほとんど影響を受けないことが明らかになった。 2.Mant-S1とTNP-ATPとの蛍光エネルギー移動 Mant-基の蛍光スペクトルと極めてよく重なった吸収スペクトルをもつTNP-基を持つATP(TNP-ATP)を合成して、TNP-ATPがMant-S1で加水分解されているきに生じる蛍光エネルギー移動を測定した。また収縮サイクルにおいて異なるステップを形成することが示唆されているミオシン・ADP・リン酸アナログ(BeFn,GaFn,Vi,MgFn,ScFnそしてAlF_4)複合体をMant-S1とTNP-ADPを用いて形成させ、Mant・TNP間の蛍光エネルギー移動を測定し、各複合体におけるloop MおよびLoop Nとnucleotideとの相対的な距離を比較して、loop Mとloop Nが収縮サイクルにともない構造変化しているか検討を行った。Loop MにおいてはBeFnとAlF_4複合体の間で大きく蛍光エネルギー移動の効率が異なっており、収縮サイクルに伴い構造変化を起こしていることが示唆された。一方Loop NではBeFnとA1F_4複合体の間に大きな蛍光エネルギー移動の差は見られず、Loop Nはほとんど構造変化を起こさない部分であることが明らかとなった。このことは蛍光偏光の実験結果と一致していると思われる。
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