研究概要 |
1.キネシンモータードメインの大腸菌による発現と精製 マウスKIF5Aの全長およびKIF5A,KIF5B,KIF5Cのモータードメイン領域(1-340)を含む領域にプライマーを作成し、マウス大脳cDNAをテンプレートとしてPCRを行い、KIF5Aの全長およびKIF5A,B,Cのモータードメイン領域を増幅させた。それらをそれぞれpET15b,21a,3bに導入してからE.coli(DE3)にトランスフォームしてIPTGで誘導発現させ、Niキレートカラムを用いて精製を行った。 2.キネシン・ADP・フッ化金属複合体の性質 キネシンATPaseサイクルの中間体を示すことが期待される、マウスキネシン・ADP・フッ化金属複合体を蛍光標識ADPアナログ,NBD-ADPを用い調べた。NBD-ADPの蛍光強度の変化から容易に複合体の形成がモニターできることが示された。さらにAlF_4複合体は、他のものと構造が違うことが示唆された。また複合体の形成速度と安定性はミオシンの複合体と大きく異なっており、このことはATP結合部位の入り口にある特徴的なループの違いに依存していると考えられる。 3.Trp導入キネシンと蛍光標識ADP誘導体との蛍光エネルギー移動 ループL5のVal105をTrpに置換したキネシンモータードメインをコードするcDNAを調製した。1.と同様に大腸菌で発現させ精製した。蛍光性Mant基を持つADP誘導体、Mant-ADPを合成して、各フッ化金属複合体中におけるループL5のTrp105とMant-ADPとの蛍光エネルギー移動を測定した。AlF_4複合体はBeFn複合体より、高い蛍光エネルギー移動を示した。このことはL5がATPaseサイクルのある状態でATP結合部位に近づくような構造変化を起こすことを示唆している。
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