研究概要 |
現在、ウェルナーヘリケース遺伝子ファミリーは、少なくともヒトでは5種類以上のメンバー(RecQ1,BLM,WRN,RecQ4,RecQ5)から成ることが知られているが、未だ生体内における機能・役割分担はいずれも明らかにされていない。我々はヘリケース遺伝子の機能異常と老化・発癌機構との関連を明らかにすると共に、RecQ1やRecQ5の機能不全がどのような疾病と結びついているのか?を解明することを目的とし、各ノックアウトマウスを樹立し解析している。 これまでの経過観察では、ウェルナーノックアウトマウスは、ほぼメンデル則で予想される個体数が得られ、野生型やヘテロ変異マウスと比較し、成長や生存日数に顕著な差は認められなかった。また、生後52週齢までに白内障や腫瘍形成は認められなかった。病理解剖解析の結果、各臓器においてマイルドな変化は認められたが、患者の臨床像と比べ明らかに軽微であった。 ロスモンド・トムソン症候群の原因遺伝子であるRecQ4ノックアウトマウスでは、ホモ変異マウスは存在せず胎生致死であると推察された。一方、Q4ヘテロ変異マウスは生存し、野生型マウスと比べ特に異常は認められなかった。 RecQ1では、ホモ変異マウスはメンデル則に従って得られ特に異常は認められなかった。RecQ5については、現在キメラマウスまで得られ、今後ホモ変異マウスを作製し解析していく予定である。 これまでの解析からファミリー遺伝子間で機能的相補性・重複性の存在が示唆され、今後、単独欠損マウス同士の掛け合わせにより得られる多重変異マウスの解析より、生体内における機能的重複性を明らかにすることができると期待される。更にウェルナーやRecQ4遺伝子のように、ヒトとマウスによる機能の違いを明らかにすることにより、老化やそれに伴う発癌などの疾患発症に関する知見が得られることが期待され、今後も継続して解析することが必要である。
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