研究概要 |
1.datA以外のdat領域の開始制御への関与 DnaA結合部位を欠失させることにより複製開始の同調が乱れ、開始頻度が上昇する例はdatA以外については報告されていない。そこで本研究では大腸菌染色体上のaldA,trkG,uvrB,yddJK,mutHおよびappYの6つの領域に存在するDnaA結合部位に変異を持つ株を作成し、フローサイトメトリーにより複製開始をモニターした。その結果、6種類の破壊株すべてにおいて複製開始は正常に起きていることが判明した。さらに、datAと並んで強力なDnaA結合部位であることが知られているmutHとappy領域のDnaA boxを同時に破壊させた株においても開始反応の異常は見いだせなかった。従ってDnaAを結合することにより過剰な複製開始を抑制するという機能はdatAに固有であるという可能性が示唆される。 2.datA内の個々のDnaA boxの役割 約1kbからなるdatA領域内には5個のDnaA boxが存在する。本研究では染色体上のそれぞれのDnaA boxに変異を導入した大腸菌株を作成し、それぞれのboxが複製開始の制御にどのような役割を果たすのかを調べた。その結果1,4,5番目のDnaA boxの破壊株では野生株と同様のフローサイトメトリーのパターンを生じたが、2番目あるいは3番目のDnaA boxの破壊株ではdatA欠失株と同じパターンを生じた。この結果は、datAによるDnaA titration作用には、datA内の2番目と3番目のDnaA boxが必須であるという事を意味している。またdatA領域欠失株と2番目もしくは3番目のDnaA boxの破壊株とで、複製開始頻度の上昇と同調の乱れが同程度であることから、datA内の2番目および3番目のDnaA boxはそれぞれ独立してDnaAを結合するのではなく、両領域に結合したDnaAが協同的に、一種の核として機能することによって、datA領域全体へのDnaAの結合を促しているという可能性が示唆される。
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