大腸菌ゲノム上には開始タンパク質DnaAを多量に結合する染色体部位(datA)が存在し、この部位は複製開始制御に関与している事をこれまでの研究で明らかにしてきた。本研究ではゲノムDNAへのDnaA結合(Initiator Titration)による複製制御に関して下記の新しい知見を得た。 1.datA以外のDnaA結合部位は開始制御に関与しない datA部位を欠失させることにより複製開始の同調が乱れ、さらに開始頻度が上昇する。このことはdatAがDnaAを結合することにより過剰な複製開始を抑制していることを意味する。datA以外のDnaA結合部位が同様な機能を持つかどうかを検討する目的で、datA以外で強力と考えられている7つのDnaA結合部位をに変異を持つ株を作成し、フローサイトメトリーにより複製開始をモニターした。その結果、7種類の変異株すべてにおいて複製開始は正常に起きており、さらにそれら7つの部位の変異を同時に持たせた7重変異株においても正常な複製開始をすることが判明した。従ってDnaAを結合することにより過剰な複製開始を抑制するという機能はdatAに固有と思われる。 2.datA内の個々のDnaA結合配列(DnaA box)の役割 約1kbからなるdatA領域内には5個のDnaA boxが存在する。本研究ではゲノム上のdatAのそれぞれのDnaA boxに変異を導入した大腸菌株を作成し、それぞれのboxが複製開始の制御にどのような役割を果たすのかを調べた。その結果、2番目と3番目のDnaA boxがdatAの機能に必須であり、これら2つのDnaA boxに結合したDnaAが核となってdatA領域全体に多量のDnaA分子が結合する事が示唆された。
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