申請者らは、熱ショック反応の分子機構を明らかにすることを目的としている。本研究では、鳥類において熱ショックによって活性化をうけるHSF1とHSF3の役割分担を分子遺伝学的方法を用いて解析を行った。ニワトリBリンパ球系細胞株DT40にいてHSF1遺伝子破壊、HSF3遺伝子破壊、そして両方の遺伝子破壊のなされた細胞株を樹立した。それらの熱ショック遺伝子の発現を調べたところ、両遺伝子破壊細胞でのみターゲット遺伝子、とくにHsp90aの発現の著しい低下が認められた。また、両遺伝子破壊細胞では熱ショック応答は全く認められなかった。HSF3欠損細胞はこの応答の顕著な現象をみとめたが、一方、HSF1欠損細胞の熱ショック応答は親株に比べてわずかの減弱しか認められなかった。以上の結果は、鳥類においては熱ショック遺伝子の構成的発現はHSF1とHSF3が独立して制御していることを示している。また、熱ショック応答は主にHSF3が制御しており、HSF1の関与はわずかであることが明かとなった。本研究で、脊椎動物におけるHSFシステムがターゲット遺伝子の発現を構成的に制御していることが初めて明らかになった。
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