(1)ニワトリ発生過程におけるHSF群の発現パターンの解析。私たちはニワトリで同定されているHSF1、HSF2、HSF3の各蛋白質の発現レベルを発生段階を追って組織別に調べた。その結果、HSF3は全ての組織で全発生段階にわたって高い発現レベルを維持しており最も重要な因子であることが示唆された。また、HSF2が発生過程で発現制御されていることが示された。(2)新しい熱ショック転写因子HSF4の解析。HSF4蛋白質の発現は脳と肺に限られて同定され、しかもHSF4bアイソフォームのみが認められた。HSF4bの転写活性可能はストレスにより増強することもわかった。つまり、HSF4bもなんらかのシグナルに対して転写を冗進することが推測され、HSF1とは異なった生理機能が推測された。(3)精子形成におけるHSF1の役割。活性型HSF1を発現するトランスジェニックマウスでは精子形成が阻害されることがわかった。パキテン後期の発達段階においてアポトーシスを著明に認めた。これらの結果は、温熱ストレスによる精子形成の阻害はHSF1の活性化によるアポトーシスの誘導によることが明かとなった。(4)HSFの活性制御機構:核移行シグナルとのリンク。トリのHSF3のNLSと推測される領域が確かに核移行シグナルとして働くこと、さらにアミノ酸の部位特異的置換により核移行のみでなく活性型の三量体形成も妨げられることを明らかにした。(5)ストレス条件下での細胞周期進行。HSFは通常の生育条件下においてもHsp90αの発現を特異的に制御し、蛋白質の安定化に働いていることが明らかになった。さらに、温熱ストレスの際にcdc2が標的の一つであることも示された。
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