アポトーシスは、細胞の収縮やメンブレンブレビングに代表される特徴的な変化を引き起こす。この形態変化に関与していると考えられる分子は今までにいくつか報告されているが、形態変化のメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、アポトーシス時におけるアクチン細胞骨格系の動きに注目し細胞形態の変化を詳細に観察することで、アクチン細胞骨格系の再構成が細胞の形態変化を引き起こしている可能性について検証することを目的とした。 EGFPラベルしたアクチンを遺伝子導入によりHeLaFD5細胞へ発現し、抗Fas抗体によってアポトーシスを誘導し連続写真撮影を試みたところ、刺激後60-80分で細胞の基底部でアクチンの環状構造が形成され、それに伴い細胞が収縮することが分かった。ブレブはこのアクチン環状構造を足場にして形成されると考えられ、またアクトミオシン系依存的に運動した。この時見られた細胞の形態変化とアクチン環状構造形成はサイトカラシンDを用いてアクチン細胞骨格を破壊した時には見られなかった。またアクチンの重合・脱重合に作用するいくつかの薬剤を作用させた実験により、アクチン環状構造の形成には重合・脱重合やアクトミオシン系によらない因子の関与が示唆され、ブレブ形成にはアクチンの重合・脱重合が必要であることが示された。 以上のことから、アポトーシス時にはアクチン環状構造が形成されアクチンの重合・脱重合を介して細胞の形態変化を引き起こし、アクトミオシン系によりブレブが活発に運動していることが示唆された。
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