アポトーシスは、細胞の収縮やメンブレンブレビングに代表される特徴的な変化を引き起こす。この形態変化に関与していると考えられる分子は今までにいくつか報告されているが、形態変化のメカニズムについては不明な点が多い。本研究課題では、これを明らかにする目的で以下の3点の解析を行った。 1.アポトーシス時におけるアクチン細胞骨格系の動きを解析した。EGFPラベルしたアクチンをHeLaFD5細胞に発現し、抗Fas抗体によってアポトーシスを誘導し連続写真撮影を試みたところ、刺激後細胞基底部でアクチンの環状構造が形成され、それに伴い細胞が収縮することがわかった。ブレブはアクチン環状構造を足場にして形成されると考えられ、またアクトミオシン系依存的に運動した。 2.アポトーシスシグナル伝達経路のどのステップで細胞の形態変化を誘導するシグナルが生成するかを検討するために、種々のアポトーシス抑制因子のFas刺激が誘導する細胞の形態変化への影響を検討したところ、核の形態変化を効率良く抑制するBcl-2は細胞の形態変化を抑制する事ができず、またカスパーゼの多くを阻害するz-VAD-FMKは細胞の形態変化を抑制したが、caspase-3を特異的に阻害するDEVD-CHOは細胞の形態変化を抑制できなかった。したがって、細胞の形態変化を誘導するシグナル伝達経路は核の形態変化を誘導するそれと、Bcl-2やcaspase-3の作用点の上流で分岐している事が示唆された。 3.細胞の形態変化に伴って変化する蛋白質をプロテオーム解析により同定するため、Bcl-2を過剰発現している細胞をFas刺激し、刺激しないものをコントロールとして、二次元電気泳動し、移動度の異なるスポットについてMULDI-TOF MS解析を行った。その結果、Lamin A/C、Lamin B、Vimentinを変化する蛋白質として同定した。
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