研究概要 |
1.MukFEB蛋白複合体の構造の解析 生物分子工学研究所の的場氏、真柳博士、森川博士らとの共同研究で、精製したMukFEB蛋白複合体とMukB蛋白をロータリーシャドーイング法により電子顕微鏡で形態観察した。MukFEB蛋白複合体はMukB単独に比べ明らかに両方の球状ドメインが大きく、またこの球状ドメインを介して高次構造をとっている像も観察された。これらからMukF、MukEをリンカーとしたMukB蛋白のネットワーク形成の可能性が示唆された。 2.SeqA蛋白に結合するDNA領域の同定 SeqA蛋白はin vitroで半メチル化GATC配列に特異的に結合するが、大腸菌の染色体上にはGATC配列が約19,000個存在する。またSeqA蛋白は細胞内でDNAのメチル化に依存して数個のクラスターを形成する。これらから複製直後の半メチル化DNAはSeqAクラスターに一時的に捕捉され、DNAが全メチル化されるとクラスターから解き放たれるというモデルを考えた。この仮説を証明するために細胞周期を同調した大腸菌をin vivoで蛋白とDNAのクロスリンクをかけ、SeqA抗体による免疫沈降でSeqA蛋白に結合しているDNA領域を同定した。その結果、複製フォークの進行に伴い複製開始領域から複製終結領域に向かってSeqA蛋白の結合部位が移動していくのが観察できた。 3.MukB蛋白の細胞内局在 MukB-Gfp融合蛋白を大腸菌で発現させるとSeqA蛋白と同じく数個のクラスターとして存在し、その局在はMukF、MukEの存在に依存していた。新生細胞ではMukBクラスターは細胞の1/4、3/4長の位置に1個ずつ存在したが、SeqAクラスターは細胞中央に1個しか存在しなかった。その後2つになったSeqAクラスターがそれぞれMukBクラスターの位置に移動し、しばらく後にMukBクラスターはさらに分裂移動して、4個のクラスターになった。また定常期ではSeqAクラスターは認められないが、MukBクラスターは細胞の中央に1個存在していた。これらからMukFEB複合体は複製後の染色体DNAを細胞の両極で折り畳み、再構成しているのではないかと考えた。
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