MUK、MSTはMAPキナーゼ関連酵素であるJNKを活性化するMAPKKKであることを我々はこれまでに明らかにしてきた。JNKはc-Junを始めとする転写因子の活性をリン酸化を介して調節することにより、広く細胞分化やアポトーシスを制御するタンパク質リン酸化酵素である。MUKは脳に、MSTは脳と横紋筋に多く発現していることから、これらの組織における細胞の分化やアポトーシスの制御に関わるものと考えられる。このうちMUKの活性調節機構を探る目的で、Yeast Two Hybrid Systemを用いてこれと結合するタンパク質の同定を試みた結果、MUK特異的な結合タンパク質であるMBIPを同定した。これはロイシンジッパー様のモチーフを持つ分子量約45kDのタンパク質で、MUKの持つロイシンジッパー様構造を介して直接MUKと結合し、MUKの活性を抑制するものであった。MBIPはMEKK1、Cot等他のJNK活性化MAPKKKとは結合せず、MUK同様ロイシンジッパー様構造を持つMLK関連酵素であるMSTとの結合も非常に弱いものであった。よってMBIPのMUKとの結合は極めて特異性の高いものであるといえる。この特異性はMAPKKKとしての活性に対する抑制効果に対しても認められ、調べた範囲ではMUKの活性のみを抑制するものであった。よってMBIPはMUKの活性を特異的に制御するタンパク質と考えられる。MBIPを293T細胞に高発現させることにより、高浸透圧によるJNK活性化が部分的に抑制されたことから、MUK、MBIPが浸透圧の変化に対応したJNKの活性調節に関与している可能性が考えられた。
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