研究課題/領域番号 |
11680686
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
松本 健 理化学研究所, 細胞生化学研究室, 研究員 (60222311)
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研究分担者 |
永田 恭介 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (40180492)
辻本 雅文 理化学研究所, 細胞生化学研究室, 主任研究員 (00281668)
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キーワード | クロマチン / アデノウイルス / アフリカツメガエル / TAF-I |
研究概要 |
鋳型活性化因子(Template Activating Factor-I,TAF-I)は、アデノウイルスDNA-コア蛋白質複合体のDNA複製および転写に必要な宿主因子として、ヒトHeLa細胞抽出液中に見いだされ、精製された酸性蛋白質である。ヒトTAF-Iは41kDのTAF-Iαと39kDのTAF-Iβよりなる。本研究は、TAF-Iの細胞内での機能を探ることを目的とする。これまでの研究より、精製した組換え体のTAF-Iβがアフリカツメガエルの除膜化精子クロマチンの脱凝縮を引き起こすことが明らかとなっていた。昨年までに、TAF-Iは、精子特異的塩基性蛋白質と直接結合してこれらをクロマチンからはずすことがわかったが、実際の卵の中で受精後におきる精子クロマチンの脱凝縮では、精子特異的塩基性蛋白質がはずれるかわりにコアヒストンH2AとH2Bがクロマチンに結合し、既に存在するH3、H4とともにヌクレオソーム構造を形成する。そこで、TAF-Iのヒストンへの結合特異性について検討した。ヒト培養細胞のクロマチンから精製した4種のコアヒストンをGST-TAF-Iと混合すると4種ともpulldownされたが、H2A/H2BあるいはH3/H4に分画したものを用いるとH3/H4のみがTAF-Iと結合した。さらに、組換え体のヒストンH1、H3、H4を用いると、H3のみが効率的にTAF-Iと結合することから、TAF-Iが、ヒストンH3に親和性が高いことがわかった。そこで、TAF-Iが脱凝縮した精子クロマチンに結合しているかどうか調べたところ、抗TAF-I抗体による免疫染色で精子クロマチンが染色された。以上の結果は、TAF-Iが、精子特異的塩基性蛋白質をクロマチンからはずすほか、一部は精子クロマチンに結合してクロマチン構造変化に関与する可能性を示唆している。TAF-Iの細胞増殖や細胞周期への関与の解明を目指して、現在、TAF-I遺伝子破壊株を作製している。
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