1)マボヤ血球の活性化に伴い発現する遺伝子の同定と細胞内情報伝達系の解析 我々は、マボヤ血球にもITAMを有する抗原レセプター様膜蛋白質(A74蛋白質)とその下流にチロシンリン酸化を介した細胞内情報伝達機構が存在することを明らかにした。本研究では、マボヤ血球の凝集による活性化により、4種類の遺伝子が発現することをmRNAディファレンシャルディスプレイ法にて見いだした。これら4種類の遺伝子発現は、抗体によるA74蛋白質の特異的な刺激により誘導されること、細胞内カルシウムイオン、PI3キナーゼ、NF-AT様因子が関与することも明らかになった。さらに、4種類の遺伝子の一つはGST・オメガ(GSTO)をコードする遺伝子、他の一つは既知の蛋白質と全く相同性がない新規の蛋白質をコードしている遺伝子であることも明らかになった。また、マウスT細胞においても、抗体による抗原レセプターの特異的な刺激でGSTOの発現が誘導されることを初めて見いだした。 2)マボヤ体液中のオプソニン因子と血球C3レセプターの解析 我々は、マボヤ体液中のオプソニン因子としてGal-レクチンと補体C3を見いだしている。本研究では、これら2種類のオプソニン因子の食作用における機能分担を明らかにすることを試みた。マボヤの食細胞は異物としてヒツジ赤血球および酵母を貪食するが、マボヤ体液の存在下では、いずれの貪食活性も強く促進される。ヒツジ赤血球および酵母をそれぞれマボヤ体液で処理し、抗体を用いたフローサイトメトリー解析を行ったところ、ヒツジ赤血球にはGal-レクチンが、酵母には補体C3が特異的に結合することが明らかになった。また、マボヤ血球にインテグリンタイプのC3レセプターが存在し、その抗体でマボヤ血球を処理すると、C3依存的な食作用の促進が強く阻害されることが明らかになった。
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