研究概要 |
培養肝臓星細胞は、細胞周囲の細胞外マトリックスに応答して著しい形態変化を示し、特に、培養基質として間質型コラーゲンゲルを用いることによりin vivo類似の多数の細胞突起を伸長する。本研究の結果から、細胞突起誘導が、細胞表面インテグリン受容体と間質型コラーゲンとの結合、細胞内シグナル伝達系、および微小管結合タンパク質(MAP2)を介し、最終的に微小管の再構築によって起こることが明らかとなった。また、培養基質の相違により、肝臓星細胞の形態変化のみならず、増殖能やコラーゲン合成・分泌活性も変化する。さらに、ゼラチンザイモグラフィーおよびRT-PCRによるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)発現の解析結果から、MMP-1,MMP-2,MMP-13,MT1-MMP,TIMP-2の発現および活性型へのプロセシングが細胞外マトリックスによって制御されることが明かとなった。従って、IV型コラーゲンを含む基底膜成分やI型コラーゲンを含む間質成分など各種細胞外マトリックス成分の再構築が、細胞周囲の細胞外マトリックス成分によって、転写レベルおよびタンパク合成・分泌後の段階で調節されているものと思われる。また、I型コラーゲンを塗布した培養皿(単量体I型コラーゲン)を用いた場合には突起の伸長は起こらないことから、星細胞はI型コラーゲンの高次構造を認識すると考えられる。細胞がI型コラーゲンの高次構造を認識するメカニズムは知られていないため、星細胞をI型コラーゲンを塗布した培養皿、I型コラーゲンゲル上およびゲル内で培養し、それぞれの培養星細胞からmRNAを単離し、RT-PCRおよびdifferential display法により培養基質による発現遺伝子の相違について検討した。現在、発現レベルに差がみられる遺伝子のいくつかについて解析中であり、肝臓星細胞が細胞外マトリックスの高次構造を認識して、遺伝子発現、従って、形態・機能を変化させるメカニズムを明らかにすることができると思われる。
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