研究概要 |
LAP2は真核生物に特徴的な核膜内の核脂質2重膜中に内在する膜タンパク質であり、細胞周期に対応したリン酸化の状態に依存して核ラミナの主成分であるBタイプラミンや染色体と結合することが明らかにされている。さらに細胞分裂終期に細胞内に分散したLAP2の染色体表面への移行がBタイプラミンの染色体への移行に先立ち起こることから、細胞周期に見られる核膜の再形成の初期の段階においてLAP2が重要な役割を荷っている可能性が推測されている。本研究においては核膜の崩壊・再形成の機構を分子レベルで明きらかにするため、このLAP2タンパク質と特異的に相互作用する細胞質因子の分離・同定を行こなった。LAP2をバイトとして用い、イーストの2ハイブッリドの系を利用しLAP2と相互作用する細胞質因子を検索した結果、89個のアミン酸から成る分子量およそ1万ダルトンのタンパク質BAF/L2BP1の分離に成功した。このBAF/L2BP1の細胞内での局在を詳細に解析したところ、中間期では核内に、分裂期では染色体上に局在する新規のクロマチンタンパク質であり事が明らかになった。またBAF/L2BP1の核内での局在を共焦点顕微鏡でさらに詳細に観察した結果、BAFは核内で均一に分布しておらず核の辺縁部に局在していることも明らかにした。これはクロマチンの局在と類似している。BAFは既にin vitroでDNAと結合していることが示されているが、この結果はin vivoでもBAFがDNAと結合していることを強く示峻するものである。さらにBAF/L2BP1とLAP2の相互作用をin vitro,in vivoにて解析した結果、BAF/L2BP1の結合ドメインがLAP2の染色体結合ドメイン内にあることも見いだした。このことはBAF/L2BP1が細胞分裂終期にLAP2を染色体表面に誘導するために重要な機能を持っていることを示唆する。さらに最近、エメリンやマンなどの他の核膜タンパク質にもBAF/L2BP1の結合ドメインが良く保存されていることが報告されており、BAF/L2BP1は核膜の形成段階においても各種核膜タンパク質のリガンドとして機能する重要なタンパク質ではないかと考えており、これの機能解析をさらに進展させている。
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