本研究では、小胞体ストレスによって発現が誘導されてくるマウスの新規遺伝子を、サブトラクションPCR法を用いてクローニングした。このような遺伝子の内、ESTに遺伝子配列が報告されているが、機能が未知である遺伝子について、その全長cDNAをクローニングし、さらにこの蛋白質の機能解析を行った。 1.この遺伝子には、3'UTRの長さが異なる、2.4kbおよび6kbの2種類のmRNAが存在し、652アミノ酸からなる蛋白質をコードしていた。この遺伝子はα-マンノシダーゼにhomologyがあり、yeastおよび、humanにもホモログ蛋白質が存在した。この遺伝子をとりあえず、AMLGと名付けた。 2.AMLGは小胞体に存在する、II型膜蛋白質であると考えられた。 3.AMLG遺伝子の発現は、種々のERストレスで誘導が見られたが、細胞質ストレスでは誘導されなかった。 4.AMLGmRNAはubiquitousな組織発現を示し、肝臓において最も発現が多かった。 5.小胞体関連蛋白質分解における、AMLGの機能を調べるため、293細胞にAMLGを過剰発現させて、α1-アンチトリプシンmutantの分解速度を調べた。その結果、AMLGはこの異常蛋白質の細胞内分解を促進することが明らかとなった。またこの作用は、小胞体マンノシダーゼの阻害剤である、kifunensineによって阻害された。 6.以上のことから、AMLGは小胞体関連蛋白質分解、小胞体での品質管理機構に関わる重要な分子である可能性が示唆された。現在その作用機序を解明するため、AMLGのマンノシダーゼ活性およびレクチン活性を測定中である。
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