研究概要 |
様々なシグナル伝達系で中心的な役割を果たすMAPキナーゼ(MAPK)スーパーファミリーとして、これまでERK,p38,JNK/SAPKの主に三種が同定・解析されてきた。しかし哺乳類細胞の刺激応答系の多様性を考えると、未同定のMAPK類似分子の存在が予想された。そこで、Expressed Sequence Tag(EST)データベースを既存のMAPKに特徴的なアミノ酸配列を基にコンピューターサーチし、新規MAPKと予想されるクローンを得た。これをプローブとしたヒト及びマウスのcDNAライブラリーのスクリーニングにより、新規キナーゼの全長をクローニングしMOKと命名した。MOKはセリンスレオニンキナーゼに特徴的な配列を持ち、全体としてMAK、MRK及びMAPKにホモロジーが高かった。MOKは様々な組織に比較的広く存在しており、培養細胞に発現させると約48kDaのタンパクとして細胞質に存在していた。MOKはMBPやCyclin B1を良くリン酸化し、自己リン酸化活性を持っていた。また、MOKはactivation loop領域にERKと同じTEYモチーフをもち、このモチーフがキナーゼ活性に必須だった。またフォスファテース阻害剤オカダ酸による細胞処理により活性が増大するので、MOKはリン酸化によって活性化されることが示唆された。従来のMAPKを活性化する血清添加、高浸透圧、アニソマイシン処理ではMOKはほとんど活性化されなかったが、発癌プロモーターであるTPA処理により活性が上昇した。これらの結果からMOKはMAPKスーパーファミリーに属する新しいキナーゼであると結論された。しかし、その活性化刺激と上流因子はこれまでのMAPKとは異なることが予想される。
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