研究概要 |
出芽酵母にはNIK1、GIN4そしてKCC4の3つの類似キナーゼをコードする遺伝子が存在する。今年度はGIN4,KCC4に関する実験も展開した。まずGIN4とKCC4 mRNAの発現が細胞周期に依存するかどうかノザン解析により調べるとGIN4とNIK1 mRNAはG1/S期をピークに増減する発現パターンが認められ、KCC4はそのような発現パターンは認められなかった。cdc28温度感受性変異株でNIK1とGIN4それぞれを欠失させた二重変異株は、親株と比べて制限温度の低下や許容温度下での細胞形態の異常を示すという遺伝学的相互作用が認められた。この表現型は標的と考えられるSwe1(Wee1ホモログ)の欠失により抑圧できることからGin4とNik1は共にSwe1を負に制御すると考えられる。またkcc4 gin4cdc28三重変異株も同様の表現型を示したことからこの3つは遺伝学的な相互作用があると結論できた。更にNik1とGin4そしてCdc28が複合体を形成することから物理的にも近いところで機能していることが示唆された。次に、Nik1とGin4及びKcc4欠損株の表現型はいずれも核に異常はないが、細胞形態に異常が認められ、Gin4とKcc4を大量発現させた時もBudが伸びた細胞質分裂の異常が認められた。細胞質分裂の制御に関わるかをGFP付加したGin4とKcc4融合タンパク質を用いて細胞内局在を調べると両タンパク質ともにBud neckに局在した。Bud neckは娘細胞の形成に必要なタンパク質群の足場となる細胞骨格が5種類のセプチンタンパク質によって形成される。Two-Hybrid法を用いてセプチンとの相互作用を調べると興味深いことにKcc4はGin4とは異なったセプチンファミリーの1つと結合し、その結合に必要な領域だけでBud neckへ局在する結果を得ることができた。
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