研究概要 |
出芽酵母NIK1遺伝子は分裂酵母の細胞周期のG2/M期移行の間接的な正の制御因子nim1+の出芽酵母ホモログである。nik1破壊株はG2期遅延以外にDNA複製の阻害剤であるハイドロキシウレア(HU)に対しても感受性を示す。我々はNIK1によるS期CDKであるClb5,6-Cdc28複合体の制御の可能性を考え、NIK1が実際にDNA複製の制御に関与しているかどうか、もし関与しているならば、どのように関与しているのかを調べた。DNA複製に欠陥のある各種の突然変異株にnik1変異の導入すると制限温度の低下、生育速度の低下などの遺伝的相互作用が観察され、それらはswe1変異を導入することで抑圧された。この結果はNIK1がSWE1を介したCDKの活性制御を通してDNA複製を制御していることを示唆する。細胞をG1期に同調した後、HUを含む培地に移してS期初期で細胞周期を停止させた後、計時的に細胞からゲノムDNAを抽出し、アルカリゲルにてDNA新生鎖の合成を見たところ、nik1破壊株では、野生型に比べると、チェックポイント機構において中心的な役割を果たすキナーゼであるRad53の脱リン酸化がわずかではあるが早くなっていた。また、抗リン酸化チロシン抗体を用いてリン酸化チロシン残基の検出を行ったところ、S期の開始につれてリン酸化されたCdc28が現われ、このリン酸化は最終的にはG2/M期にピークに達していた。さらに幾つかの実験結果から、Nik1の役割は、S期CDKであるClb5,6/Cdc28の活性を直接制御してS期開始と進行を制御するというものではなく、DNA複製に問題が生じたときのチェックポイント機構による細胞周期停止から復活する時点で、正しいタイミングで細胞周期に復帰できるようCDKの活性を制御することだと結論した。
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