形態形成と細胞増殖(分化・細胞周期)は厳密に連携制御されている。本研究では、出芽によって増殖する酵母と分裂によって増殖する酵母を使って、この分子機構(チェックポイント機構)の解明を目指した。 1.分裂酵母の成長極性維持に重要なMok1の同定:スタウロスポリンに超感受性を示す球形変異体mok1について解析した。Mok1蛋白質はalpha-グルカン合成活性を持ち細胞壁合成に必須で、細胞周期依存的に成長極性領域に局在することがわかった。 2.分裂酵母の新規微小管folding因子の同定:極性異常変異alpの解析から、微小管重合の際に重要なfolding因子、補因子B(Alp11)と補因子E(Alp21)を同定した。 3.蛋白合成系と増殖制御系とが密接に関係する:過剰発現により成長極性異常を誘導する分裂酵母遺伝子として、蛋白合成に必須なペプチド鎖伸長因EF1αを取得した。蛋白合成系が直接、細胞骨格と相互作用し、形態形成・細胞周期制御に関与することが示唆された。 4.出芽酵母のCa^<2+>情報伝達欠損株を利用した生理活性物質の新規スクリーニング系の開発:出芽酵母Ca^<2+>情報伝達欠損株は、特殊な遺伝的背景のもとで、特徴的な表現型を示す。この表現型を利用すれば、Ca^<2+>情報伝達経路の阻害物質が、選択可能であることを示した。 5.分裂酵母における蛋白合成と細胞増殖とを連携制御する新規チェックポイント機構の発見:蛋白合成阻害が、細胞周期G2期の成長極性変換点NETOの遅延を誘導することを見いだした。蛋白合成阻害シグナルによって、Weelが転写および転写後調節のレベルで活性化されることを示した。 6.出芽酵母において、GSK-3キナーゼMck1はカルシニューリンと協調して、Ca^<2+>によるHsl1キナーゼの分解・局在制御に重要である:Ca^<2+>情報伝達経路は、Swe1キナーゼの活性調節をとおし、細胞周期M期進入を制御する。今回、本経路に重要な分子として、GSK-3キナーゼMck1を同定した。解析の結果、Mck1とカルシニューリンは協調して、Hsl1の局在変化と蛋白分解に重要であることを示した。
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