研究概要 |
細胞表面に発現する70kD熱ショック蛋白質(HSP70)の遺伝子をクローニングするために,cDNAライブラリーを作製し,以下の方法でクローニングを行っている. (1)蛋白質アミノ酸配列の決定 抗体NT22は細胞表面に発現するHSP70相同分子を認識する.アフィニティークロマトグラフィーによってNT22抗原を精製し,限定分解産物のアミノ酸配列を決定した結果,Lamin B1蛋白質と同じ配列が得られた.リコンビナントLamin B1蛋白質を作製したところ,NT22抗体はこの蛋白質と反応した.しかし,ポリクロナル抗Lamin B1抗体は細胞表面のNT22抗原と反応しなかったことから,細胞表面のHSP70相同分子はLamin B1蛋白質ではないと結論した. (2)PCRクローニング法 細胞表面に発現するHSP70を認識する抗体NT22のエピトープをmappingし,HSC73蛋白質のアミノ酸345-373の領域を認識することを明らかにした.この領域をコードするDNA配列をもとにしてdegenerated primerを作製し,PCRクローニングを試みた結果,PCR産物が1種類得られた.塩基配列を決定したところ,これまでに報告のない未知の遺伝子であることが判明した.しかし,この遺伝子にはHSP70相同配列やNT22エピトープ相同配列が含まれておらず,細胞表面のHSP70相同分子である可能性は低いと判断された. (3)発現クローニング法 Daudi細胞から,発現クローニングのために2種類のライブラリーを作製した.1つは,通常の発現クローニングのためにpcDNAI/amp vectorに挿入したライブラリー,他の1つはsignal sequence trap法のためにpDisplay vectorに挿入したライブラリーである.現在,これらのライブラリーを用いて発現クローニングを行っている.また,Hela細胞のretrovirus cDNAライブラリーを得た.これをマウスMeth A細胞に感染させ,NT22発現細胞をセルソーターで回収する方法も行なっている.
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