研究概要 |
[昨年度]筋分化過程で細胞外プロテアーゼが重要な働きをしているという結果が、試験管内の培養系で幾つか報告されていた。しかし、それらの実験には、プロテアーゼやインヒビターを多種多様に含む血清を用いているために、どの様なプロテアーゼ分子種が関与しているか明らかではなかった。昨年度は、筋分化誘導系の細胞として最も良く用いられているマウスC2C12細胞を無血清条件下で効率良く分化誘導できる系を樹立し、論文として報告した(Analytical Biochem.272:135,1999)。 [本年度]昨年度に確立した無血清分化誘導系の詳細についてを2000年の分子生物学会で報告するとともに、この無血清の筋分化誘導系に系に種々のインヒビターを添加することで、分化過程における筋芽細胞自身が産生する細胞外プロテアーゼの重要性を明らかにした。また、細胞外プロテアーゼ活性を網羅的に検出できる系であるザイモグラフィー法をさらに高感度に改良した。 [成果1]無血清培養系にセリン、メタロのプロテアーゼインヒビターを添加するだけでは分化を止めることが出来ず、両方のインヒビターが共存するときにのみ分化誘導が抑制されることが判明し、筋芽細胞自身が産生する両種のプロテアーゼの重要性を明らかにした。また、筋分化の分化段階に伴いセリンプロテアーゼやメタロプロテアーゼの活性が変化することが明らかとなった(投稿準備中)。[成果2]これまでのメタロプロテアーゼの検出のために使用されていた条件を改良することで、検出感度を5倍以上に上げることが出来た(論文投稿中)。その結果、ほとんど検出されていなかったメタロプロテアーゼ活性を明白に検出できるようになった。[成果3]セリンプロテアーゼについても同様に検討して、メタロプロテアーゼほどではないが有意に検出感度を上げることが出来た。
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