自食作用は栄養飢餓シグナルによって誘導され、細胞質成分を二重膜でとりかこむオートファゴソーム形成を経て、その外膜を液胞膜と融合後オートファジックボデイを液胞内の放出し分解する過程である。このダイナミックな膜動態を伴う現象の分子レベルでの解析は、14個の自食作用不能変異株を相補するAPG遺伝子をクローニングすることによって行われてきた。私はapg2およびapg15変異株を用いてまだクローニングされていないAPG2とAPG15遺伝子を酵母の染色体バンクから単離することを試みてきたが、成功していなかった。しかしこの研究開始直後に研究協力を行っている基礎生物研究所細胞内エネルギー変換研究室が、APG2遺伝子のクローニングに成功し解析をすすめることになった。そこでAPG15遺伝子に焦点を絞り、クローニングをすすめた。 平成11年度の研究成果 1.2種類の遺伝子ライブラリーを用いてapg15変異株に形質転換を行い、オートファジックボディーの蓄積で自食能の回復をみることにより、2個の相補クローンを得た。 2.挿入された染色体DNA領域のORFのサブクローニングを試み、相補能を持つ遺伝子の同定を行っている。平成12年度はこの結果に基づき、APG15遺伝子を同定し、融合タンパク質を生成し抗体を作成する。これを用いて遺伝子産物の機能および細胞内局在を解析する。また他の13個のAPG遺伝子との相互関係を解析し、APG15遺伝子が自食作用にどのように関わっているのか明らかにしたい。
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