酵母の自食作用というダイナミックな膜動態システムには多くのAPG遺伝子産物が関与している。本研究はまだクローニングされていないAPG2とAPG15遺伝子を酵母の染色体バンクから単離し、解析することを目的とした。しかしこの研究開始直後に研究協力を行っている細胞内エネルギー変換研究室(基生研)で、APG2遺伝子をクローニングし解析をすすめた。そこでAPG15遺伝子に焦点を絞り、この変異株の胞子形成能の回復を指標としてクローニングし、第十三番染色体のYMR159CというORFがAPG15であることを明らかにしたが、このORFはすでに水島等によってAPG12をベイトとしたTwo-Hybrid法により取られたAPG16として報告されていた。apg16遺伝子破壊株がapg15変異株を相補したという結果から16番目のAPG遺伝子と命名されたが、この矛盾した結果を再検討するために、apg15-1変異株のシークエンス、および相補性の再確認実験を行った。YMR159cを含む約1、500塩基のシークエンスによりapg15-1変異はAPG16に生じたオパール変異であることが明らかになった。しかしapg16遺伝子破壊株とapg15-1変異株の二倍体はPMSF存在下で液胞にオートファジックボデイを蓄積し、成熟型アミノペプチダーセIを生成し、自食作用の回復を示した。二倍体を胞子形成させ四分子解析を行ったところ、そのApg+:Apg-の分離比はメンデル遺伝で説明出来ないことが明らかとなった。その後の解析からapg16遺伝子破壊株/apg15変異株の二倍体が示すApg+の表現型はapg16遺伝子破壊株を作成した酵母株の細胞質性のサプレッサーによるものであることが明らかとなった。さらにapg15-1は既知のオムニポテントサプレッサーによっても抑制される特異な変異であった。現在このサプレッサーの性状、遺伝的挙動などを解析しており、apg15-1変異株が効率よく相補される現象を解析している。
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