1)酵母自食作用に必須な蛋白質の一つと相同性を持つラットLC3蛋白質に、細胞質に分布するLC3-1とオートファゴソームに局在するLC3-IIの2型が存在することを見いだした。また生合成されたLC3のC末端22残基が切断されてLC3-1が生じ、その後さらに修飾を受けてLC3-IIに変化することが判明した。この翻訳後修飾によるLC3-II形成は、オートファゴソームの形成と相関して制御されており、LC3-IIとオートファゴソームの存在量は比例していた。自食作用を遂行するオートファゴソームの膜に結合する蛋白質が同定されたのは世界でも初めてであり、LC3-IIはオートファゴソームマーカーとして極めて有用と思われる。(現在論文投稿中) 2)自食作用を制御する蛋白質Beclinが、ゴルジ体に局在することを明らかにした。おそらくゴルジ体からの小胞輸送に関与することで自食作用を制御していると考えられる。 3)酵母自食作用蛋白質のヒトホモログhAPG5とhAPG12がそれら以外の蛋白質を含む非常に大きな蛋白質複合体を形成していることを示した。複合体を構成する蛋白質を同定することで、自食作用の装置の解析が進むであろう。さらにhAPG5遺伝子を破壊したES細胞の作成に成功した。この細胞は上記複合体を形成できず自食作用も全く行えないことから、hAPG5を含む複合体の形成が自食作用に必須であることが証明された。自食作用を人為的に欠損させた細胞の報告例はこれまでなく、この細胞を用いることで自食作用の分子機構と生理的意義の解明に進展が期待される。
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