巨核球の増殖や分化を制御する新規因子を探索する目的で、マウス骨髄細胞から精製した巨核球を用いて、巨核球の増殖や分化を制御しているトロンボポエチン(TPO)により発現する因子のcDNA断片をPCR-Subtraction法により14クローン単離した。今年度はそのうちの一つをプローブとして、マウス巨核球由来cDNAライブラリーから、235残基のアミノ酸からコードされる分子量約27kDaの新規RGS(regulator of G protein signaling)蛋白質を単離した。RGS蛋白質は、G蛋白質シグナル伝達系の新たな負の調節因子として近年注目を浴びている因子で、現在、ほ乳類では20以上の分子種の存在が報告されており、それをRGS18と命名した。マウスの様々な組織におけるノーザンブロット解析では、弱いながら脾臓と肺でのみ発現が認められた。そこで、他のRGS蛋白質と相同性のないN末側のペプチドに対するラット・ポリクローナル抗体を作成し、間接蛍光抗体法により脾臓切片における発現を調べたところ、巨核球に特異的な発現が認められた。FACSを用いて集めた各骨髄造血細胞においても、リンパ球系と赤血球系をのぞいて発現が認められ、弱いながら造血幹細胞にも確認された。また、RGS18のC末端側にはGRKと呼ばれるG蛋白質αサブユニット(Gα)と結合するアミノ酸モチーフが認められ、実際in vitro結合実験でGaiとGαqに特異的に結合し、それらに対してGAP活性を有することが判明した。さらに、TPO共存下で巨核球のコロニー形成を促進するケモカインであるSDF-1が、GαqではなくGαiとRGS18との結合に影響を与えることが判明した。
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