11年度:赤芽球・巨核球の増殖・分化に関与する因子として、既存のMAPKに焦点をあてたところ、アポトーシスに関与しMAPKファミリーに属するp38やJNKが、ストレ刺激ばかりでなく、赤芽球や巨核球の増殖や分化を制御するエリスロポエチン(EPO)やトロンボポエチン(TPO)等のサイトカインでも活性化されることを見い出し、造血細胞の増殖及び分化に関与するという新しい生理機能が明らかになった。また、JNKに至る上流のシグナル伝達経路が、ストレスとサイトカイン刺激の場合異なることを明らかにした。さらに、ストレス刺激の強度や時間の違いによって、造血系細胞はアポトーシスにも細胞分化にも誘導される現象を見つけ、細胞分化とアポトーシスはMAPKファミリーを含めたシグナル伝達経路を一部共有しており、活性化のレベル、タイミング及びバランスにより、細胞分化とアポトーシスの方向が決定される事を明らかにした。 12年度:巨核球の増殖・分化を制御する新規因子を探索する目的で、マウス骨髄細胞から精製した巨核球を用いて、TPOにより発現する因子のcDNA断片をPCR-Subtraction法により14クローン単離した。そのうちの一つをプローブとして、マウス巨核球由来cDNAライブラリーから27kDaの新規RGS蛋白質を単離した。RGS蛋白質は、G蛋白質シグナル伝達系の新たな負の調節因子として近年注目を浴びている因子でありRGS18と命名した。RGS18は造血系特異的に発現しており、特に巨核球に強く発現していたが赤芽球系には発現していなかった。また、RGS18にはG蛋白質αサブユニット(Gα)と結合するアミノ酸モチーフが認められ、in vitroでGαiとGαqに特異的に結合し、それらに対してGAP活性を有していた。さらに、巨核球コロニー形成を促進するケモカイン(SDF-1)がGαiとRGS18の結合に影響を与えることが判明した。RGS18は巨核球の増殖、分化、移動に重要な役割を担うことが示唆され更に解析を進めている。
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