細胞性粘菌Dictyostelium discoideumにおける有性生殖異常の挿入突然変異体MCF1を用いて変異の原因遺伝子として単離されたmacAは、D.discoideumの細胞融合に不可欠である。また、受精に関わる既知の遺伝子と全く相同性のない、新規な遺伝子である。この興味深い遺伝子がコードするタンパク質MacAの構造と機能を、以下の二つのアプローチで解析している。 A.macA全長を含むcDNAの単離とその産物MacAの解析 現在得ているmacA遺伝子の配列は染色体DNAのものであるので、産物の解析にはcDNAのクローニングが必要である。染色体DNAの配列を利用してプライマーを作製し、RT-PCR、TA-クローニングし、ORFの全長をカバーする断片的なmacA cDNAを得た。現在これらをつなぎあわせて発現ベクターに組み込む作業を行っている。全長cDNAが得られれば細胞性粘菌内で過剰発現させ、産物であるMacAを同定する、あるいは局在を調べる等の実験が可能になる。 B.ペプチド抗体を用いたMacAの解析 macAの配列から想定されるアミノ酸配列をもとにして抗原性の高い部位を予測し、その部位に相当するペプチドを人工合成した。得られた合成ペプチドを用いてウサギを免疫感作し、特異的な抗ペプチド抗体を作製した。現在、野生型細胞の全タンパク質に対するウエスタンブロッティング、免疫沈降などの方法によって、抗ペプチド抗体の標的分子を同定する作業を行っている。
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