細胞性粘菌Dictyostelium discoideumの有性生殖における配偶子間相互作用に重要な役割を持つとされていた遺伝子、GP138およびmacAの解析を行った。GP138に関してはこれまでに多重遺伝子であることを明らかにしてきたが、このたび4種類の類似した遺伝子が縦につながっていることを示して染色体DNAの構造を明らかにするとともに、それら全てを失った破壊株の作成に成功した。macAは配偶子間の融合が不能になっている挿入突然変異体の原因遺伝子として同定されたが、遺伝子の詳細な解析および産物であるMacAタンパク質の解析は全く行われていなかった。そこで、D.discoideum細胞内でタグ付融合タンパク質を強制発現させることによってこれらの解析を進めることとした。染色体DNAの配列しかわかっていなかったmacAについて、未単離だった両末端部をクローニングするとともに、イントロンを除去して連結し、完全長cDNAをクローニングした。次に、これをタグのついた発現ベクターにリクローニングし、D.discoideumの野生型細胞に形質転換した。しかしながら、抗体による発色パターンの結果から導入した融合遺伝子が機能していないことが懸念されたため、現在別のベクターにリクローニングしたmacA融合タンパク質を変異体で発現させ、機能回復を確認するシステムを構築している。また、macA遺伝子の機能を知るひとつの手がかりとして遺伝子の発現解析を行った。RT-PCRの結果によると、macAは性的成熟に伴って発現が増加するものの、増加率としてはわずか1.8倍で、細胞融合能を持たない細胞にも発現していることが明らかとなった。このことから、macAは直接細胞融合に関わる以外の機能も持っていることが予想された。
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