研究概要 |
本研究は、細胞性粘菌の有性生殖をモデルシステムとして、配偶子間相互作用の遺伝子支配を明らかにする目的で行われ、以下のような研究成果が得られた。 1.免疫化学的手法による研究の成果:配偶子間相互作用をブロックする抗体の標的分子gp138をコードすると考えられていたGP138遺伝子群の解析を行った。新たにGP138C、GP138Dの2種類とORFが短い偽遺伝子2種類を単離した。また、GP138A-D4種の全ノックアウト株を作製し、その解析によって、GP138遺伝子群は真のgp138をコードせず、無性生殖過程に関係しているという可能性が示された。 2.挿入突然変異の誘発による研究の成果:有性生殖過程が異常となった変異体を単離し、ベクター挿入部位周辺のゲノム配列を解析した。原因遺伝子と考えられる2箇所のイントロンを含む6.3KbのORFを同定し、当該遺伝子をmacAと名付けた。 3.逆遺伝学的研究の成果:配偶子で機能している遺伝子の網羅的解析を試みた。配偶子で発現する遺伝子のcDNAライブラリーを作製し、約1,000クローンの塩基配列解析を行った結果、基本的生命活動に関わる遺伝子が大半を占めていることが明らかになった。そこで、配偶子特異的な差分化ライブラリーを作製し、得られた901クローン全ての配列解析と、内100クローンの発現解析を行い、60%以上が配偶子特異的であることを確認した。このライブラリーには細胞間相互作用に関わると考えられる遺伝子も含まれており、今後の解析に役立つと期待される。
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