研究概要 |
本研究は、(1)蛍光の脱消光を利用した、先体反応に伴う膜融合の検出。(2)蛍光色素fura-2を利用した細胞内のカルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)の測定、(3)蛍光色素BCECFを利用した細胞内の水素イオン濃度(PH_I)の測定、(4)光学顕微鏡および電子顕微鏡による先体反応の検出を利用して、精子先体反応の細胞内情報伝達を解析しようとする試みである。 本年度、明らかになったのは(1)蛍光色素octadecanoyl-aminofluoresceinでウニの精子を過剰染色し、先体反応を誘起した時、観察される蛍光強度の増大の経時変化と先体反応率はよく一致している。(2)蛍光色素octadecanoyl-aminofluoresceinで染色した精子を蛍光顕微鏡で観察すると、まず精子頭部が一過性に光り、やがて全体に波及していく。(3)G-actinの重合を抑えるLatrunculin Aで処理した精子は蛍光の増大は示すが、先体反応はおこしていない。ただし透過電子顕微鏡観察によると、先体胞膜と細胞膜の融合はおこしている。以上より蛍光の増大は、先体胞膜と細胞膜の融合を反映していると思われる。(4)脱消光の測定と共に[Ca^<2+>]_iとpH_iの測定を行なったが、脱消光は蛍光の増大より、6〜7秒先行した。これは情報伝達において、[Ca^<2+>]_iとPH_Iの増大が、膜融合に先行する事を示している。(5)卵ゼリーを分画し活性を見ると、分子量30,000以上の成分のみで先体反応を誘起しうる。5,000から30,000の成分は先体反応を起こさず、[Ca^<2+>]_iおよびpH_Iの変化を起こした。5,000以下の成分のみにても[Ca^<2+>]_iの変化を起こした。 このように先体反応に伴う変化のうち、膜融合、[Ca^<2+>]_iおよびpH_Iの変化を分けて検出できるようになり、先体反応の情報伝達の解析の有力な手段となりうることを示した。
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