本年度研究計画事項である、1)Hedgehog(Hh)およびPatched(Ptc)遺伝子群の時間的空間的発現パターン解析、2)両遺伝子群の胚内強制発現による形態形成への影響、3)機能領域改変遺伝子導入による胚発生異常の検討、4)Ptc遺伝子の転写制御領域解析について、以下に述べる。 1.当初予定の2遺伝子群に加え細胞内シグナル伝達遺伝子であるGli遺伝子3種類の時間的空間的発現パターンを胚および肢芽形成期で解析した。その発現様式は、初期胚でsonic Hhを囲むようにPtc2、その周囲にPtc1が発現し、Ptc2とGli1が相同のパターンを示した。肢芽形成では軟骨形成に関わるbanded HhとPtc2が相対的な発現を示すという興味深い結果を得た。 2.3種類のHhを強制発現させた場合、3者共にPtc2発現領域拡大など同様の効果を示し、本実験系では3種類のHhに機能上の差は見いだせなかった。2種のPtc遺伝子強制発現に関しては神経系、上皮系組織の異常を含め現在検討中である。 3.HhおよびPtc遺伝子群について、変異発現コンストラクト作成し初期胚で発現させることはまだ実施していない。しかし、Tbox遺伝子群を対象に、転写抑制配列の付加、ホルモン誘導型改変遺伝子作成など実績を積みつつあるので、当初の目的を近い将来達成できると考えている。 4.2種類のPtc転写制御領域についてGFPレポーター遺伝子を融合したコンストラクトを作成し、トランスジェニックカエルを用いて解析した。その結果、両遺伝子の正常胚での発現制御を反映すること、Gli結合領域および特異な保存領域の存在が確認された。 以上の研究に加え、本シグナル伝達系を含め広く形態形成の転写制御に関わっているTbox遺伝子群、さらに原腸陥入運動やアポトーシスに関わると予想される蛋白質分解酵素群に関し、新規遺伝子約5種の単離・構造および発現解析を行っている。
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