研究概要 |
1)ニワトリleftyの単離 ニワトリleftyの単離を目的として、mouse,humanのleftyを比較して保存されているアミノ酸の領域をもとに縮重したプライマーを合成し、ニワトリ初期胚から調製したtotal RNAを鋳型に用い、RT-PCRを行い、いくつかのcDNAクローンを得た。その中のひとつはmouse,humanのleftyと相同性が高かった。その発現様式をWhole-mount in situ hybridization法を用いて、解析したところ、st5から神経管の将来神経底になるところの左側、st7では左側の側板中胚葉に発現しており、相同性と併せて考えて、この遺伝子はニワトリのleftyであると結論した。 2)左右軸形成に関与する新規遺伝子の同定とその発現様式の解析 左右軸形成に関与する新規遺伝子の単離を目的として、st4,st5,st7の時期の左右の胚を用いて、cDNAライブラリーを作製する。左右から作製されたcDNAを用い、サブトラクション法をおこない右特異的、左特異的な遺伝子の同定を行う。サブトラクション法で同定された遺伝子が左右特異的に時期特異的に発現するのかをwhole-mount in situ hybridization法により、詳細に調べる。時間軸に沿った空間的発現様式を解析することで、遺伝子カスケードが予測できると思われる。 その解析によってとれてきたもののなかにcSnRがあった。これはZn finger domainをもった転写因子で側板中胚葉の右側に発現してくる。初期での解析はすでに報告されているので、もっと後期の解析をおこなったところ5日胚での生殖原基に発現していた。それには左右の差、雌雄の差はなかった。 しかしながら、7日胚以後の性腺に関しては雄の右の性腺に強く発現しており、雄の左の性腺、雌の左右の性腺では発現していなかった。このことは、この転写因子cSnRが性分化に関係すると同時に、鳥類の雄性生殖器の右側が退化する現象を説明できることを示唆した。
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