本年度は、臓側中胚葉部域化における内胚葉の関与についての解析をすすめた。得られた成果は以下の通り。1、まだ未分化な側板中胚葉と内胚葉との間にアルミフォイルを挿入して組織間相互作用を遮断し、臓側中胚葉に対する影響を解析したところ、本来ならば臓側中胚葉が分化すべき領域において、臓側中胚葉遺伝子マーカー、HFH-8の発現がみられず、臓側中胚葉が誘導されなかった。即ち、内胚葉との相互作用により、未分化な側板中胚葉から臓側中胚葉が誘導されることが明らかとなった。この相互作用を担う因子の性質を調べるため、フォイルの変わりに、細胞同士が接することは出来ないが、分泌型の因子は通過することが出来る微少な穴の空いたフィルターを挿入した。この場合は、HFH-8を発現している臓側中胚葉が正常に誘導された。即ち、内胚葉由来の因子は分泌型分子であると示唆された。2、側板における既知のシグナル分子の発現の解析により、分泌型分子であるShhが、未分化な側板中胚葉から臓側中胚葉が誘導されると考えられる時期の側板内胚葉において発現していることが分かった。3、Shhを過剰発現させた細胞の塊を移植することで、Shhを外胚葉寄りの将来壁側中胚葉が誘導される領域に作用させたところ、臓側中胚葉が誘導された。即ち、Shhは未分化な側板中胚葉から臓側中胚葉を誘導出来ることが明らかとなった。4、実際に臓側中胚葉の誘導にShhシグナルが働いているか明らかにするために、最近Shhのシグナルを特異的に阻害することが報告されたアルカロイド、cyclopamineをDr.Gaffieldに分与していただき、臓側中胚葉が誘導されていると考えられる時期に、Shhシグナルを阻害した。その結果、臓側中胚葉は誘導されず、Shhシグナルが確かに臓側中胚葉誘導の機構として働いていることが明らかになった。
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