研究概要 |
1)大脳皮質由来の神経突起の伸長と成長円錐の行動を抑制する成熟脊髄膜分画の作用について(Nagashima et al.,J.Neurobiol.,1999) : 伝導路を構成する軸索の成長が発生過程に従って減弱する現象に対して、標的領域の灰白質に存在する軸索の成長を促進する分子の減少か、或いは成長を抑制する分子の増加が、軸索伸長を調節している可能性が考えられる。生後1日齢のハムスターの大脳皮質知覚運動野を、生後1日齢から3週齢の頚髄から抽出した膜分画上で組織片培養し、異なる生体条件に対する神経突起の応答について、突起伸展の状況を経時的ビデオ顕微鏡による動的行動解析により検討した。その結果、脊髄の成熟に従って神経突起の成長を抑制するようになる原因として、白質に局在し髄鞘形成に関連した分子のみならず、成熟灰白質にも抑制性の分子が存在し、皮質脊髄路軸索の成長円錐を誘導している可能性が示唆された。 2)リーラーおよびウィーバーマウス小脳のプルキンエ細胞に関連する星状膠細胞におけるグルタミン酸トランスポーターGLASTの減弱について(Fukaya et al.Neurosci.Res.,1999) : GLASTは小脳のバーグマングリアに発現するが、小脳の細胞構築に異常をきたすリーラーおよびウィーバーマウス小脳でGLASTの発現を検討した。GLAST免疫陽性細胞は、プルキンエ細胞の細胞体および1次樹状突起に近接した星状膠細胞であり、プルキンエ細胞に関連した星状膠細胞におけるGLASTの発現はこれらの奇形マウスでも保存されていた。しかし野生型と比較して、GLASTの転写レベルは、リーラーおよびウィーバー小脳皮質でおよそ1/3に、リーラー小脳皮質下でおよそ1/6に減弱していた。過去の結果と合わせて、小脳の星状膠細胞におけるGLASTの発現は、隣接するプルキンエ細胞の分化に対応して制御されている事が示唆された。
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