研究概要 |
近年、神経回路の形成に関与する拡散性の軸索ガイド因子としてnetrinとsemaphorinIII/collapsin-1が同定されたが、それらの受容体はいずれもこれまで細胞接着分子として分類されていたDCC、Unc-5とneuropilinであった。従って、軸索表面に分布し、細胞接着や軸索束形成などの直接接触を介した局所的な現象に関与すると考えられていた細胞接着分子が、さらに拡散性の軸索ガイド因子に対する受容体として機能することが示されたわけである。そこで、本研究では脊髄神経節の軸索投射系を用い、軸索ガイド因子の受容体として機能する細胞接着分子を培養実験でスクリーニングした。孵卵3-4日のニワトリ胚脊髄神経節を脊索と三次元コラーゲンゲル中で共培養すると、脊索からの拡散性の軸索反発因子によって脊髄神経節細胞の軸索は脊索を避けるように伸長する。この培養系の培地に、脊髄神経節細胞の軸索表面に発現する免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子(Ng-CAM,SC2/axonin-1など)に対する機能阻害抗体を加えて、軸索反発活性の変化を調べた。その結果、axonin-1/SC2の機能を阻害する抗体添加によって軸索反発活性が有意に弱められたが、Ng-CAM、Nr-CAM、またはNCAMに対する抗体では変化が見られなかった。従って、脊髄神経節の軸索表面に発現するaxonin-1/SC2が脊索由来の軸索反発因子の受容機構に関与することが明かになった。
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