平成11年度にニワトリ胚の脊髄神経節と脊索とのコラーゲンゲル共培養系を用い、脊索由来の軸索ガイド因子の受容体として機能する細胞接着分子をスクリーニングした。その結果、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)細胞接着分子であるaxonin-1/SC2が、脊索由来の軸索反発因子の受容機構に関与する可能性が示された。さらに、IgSFとは異なるグループに属する細胞接着分子であるneuropilin-1についても共培養系を用いて検討した結果、この分子が皮筋節や脊索由来の軸索反発因子の受容機構に関与するが、腹側脊髄由来の反発因子の受容機構に関与しないことが明らかになった。これらの培養実験は要素を抽出した人工的な環境を作りだしているため、生体内での機能解析が不可欠である。そこでaxonin-1/SC2のマウスホモローグであるTAG-1欠損マウス胚(東京医科歯科大学深間内先生より供与)を種々の発生段階(胎生12.5-18.5日)で4%パラフォルムアルデヒドを用いて固定し、クリオスタット切片を作成しニューロフィラメント抗体を用いた免疫組織化学法を行った。その結果、脊髄神経節の軸索の走行に異常が認められなかった。一方、neuropilin-1欠損マウスについてはすでにKitsukawaら(1997)によって、皮筋節への異常な投射が報告されている。これらの結果を考えあわせると、脊髄神経節に対する軸索反発因子の受容機構には、皮筋節由来の因子についてはneuropilin-1が主要な役割を果たし、脊索由来の因子については少なくともneuropilin-1とaxonin-1/SC2が関与し、一方、腹側脊髄由来の因子の受容機構にneuropilin-1が関与しないことが示された。
|